永住申請が不許可となってしまうケース

永住許可申請も他の在留資格の申請と同様に個別の事案であるため、許可が得られるか不許可となってしまうのかはあくまでケース・バイ・ケースなのですが、不許可となってしまう理由として多いのは以下のようなものが挙げられます。

! 日本への定住性が認められない

日本からの出国日数があまりに多く、安定して将来に渡って日本で生計を営んでいくことが認められないようなケースでは、生活の本拠が日本にはないと判断され、永住許可がされない可能性があります。

永住者とは外国人に対しての制限を極力排して、日本人とほぼ同様の身分上の地位が与えられるものなので、日本に生活の基盤があることは当たり前のことなのです。

! 申請時点で日本での居住期間が足りていない

一部の例外的なケースを除いては、基本的には10年経過してから申請をしないと、国益適合要件を満たさないと判断されて不許可となってしまいます。

永住申請は、申請してから結果が出るまで6ヶ月~1年くらいかかりますが、申請期間中を合算して10年経過の要件を満たすのではなく、申請をする時点において許可に必要とされる年数が経過していることが原則として必要です。

! 勤務先の変更があった

申請時点における勤務先が、前回の更新、変更等の時点から変わっているような場合で、その後一度も更新や変更の審査を受けずに永住許可申請を行うようなケースです。

必ずしも不許可となってしまうわけではありませんが、基本的には、転職後すぐのタイミングでの申請や、申請期間中において転職することは避けたほうが好ましいです。

! 年収が低い

永住許可要件の1つである「独立して生計を営むことができること」の証明は、直近3年間の収入は住民税の課税証明書及び納税証明書で証明しますが、だいたい年収300万円以上ないと、許可はされにくいです。

ただ、年収のみを持って全てを判断をされるというわけではなく、その他、在留状況、家族状況等を総合的に判断されて例外的に許可になるケースもあります。

また、一般的な年収の人であっても扶養家族が多い場合には消極的に判断されてしまいます。

扶養家族を多くして、市県民税が非課税となってしまっている人は絶対に不許可となってしまうわけではありませんが、本来必要のない本国の家族等は扶養家族から外してもらったほうが良いかもしれません。

このことは、永住許可申請だけではなく他の類型の在留資格についても該当するので注意が必要です。

! 国民年金・厚生年金を支払っていない

ここ数年の傾向としては、年金支払実績の有無も審査綱領の一つとされております。

年金の支払いを怠っていた人は、後納した場合を除いては許可の可能性としてはほぼ絶望的です。

どのくらいの期間支払っていれば良いのかといった明確な基準は公表されてはおりませんが、一般的且つ常識的な範囲での支払実績を有することが必要です。

! 夫婦仲がうまくいっていない

日本人配偶者で永住申請をしている場合、申請の審査の段階で夫婦仲がうまくはいっていない事情が入局管理局側に判明してしまうと不許可になってしまうことがあります。

これは、永住許可が下りた後に即離婚をしたり、別居を始めたり、挙句の果てには帰国してしまって夫婦としての実態がなくなってしまうケースが多いことに起因します。

そもそも、夫婦仲が破綻するかもしれないというのに、そのまま日本滞在の便法として永住許可申請はするべきものではありません。

配偶者との離婚や死別の場合で、日本人配偶者や永住者の配偶者と婚姻後、3年経過しているか又は子がいる場合には、「定住者」の在留資格変更が認められる可能性も高いため、離婚が確定的なケースでは、

×「嘘の永住許可申請」ではなく、☞ ○「真の定住者への在留資格変更許可申請

を行うべきです。

! 過去に提出した書類と矛盾がある

過去の申請で、入管に既に提出してある証明書や理由書等の書類と今回提出した書類の記載事項等の間に矛盾点や食い違いがある場合には、書類の信憑性がないと判断されて不許可となることがあります。

入国管理局は嘘を一番嫌いますので、嘘の申請だけは絶対にしてはいけません。

! 申請時に最長期間のビザがあったが申請中に短いビザに切り替わった

許可要件の1つである「現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること」とは、申請時点においても、申請期間中においても、許可の与えられる時点においても満たしていなければなりません。

永住許可申請をしても、従来の現に有している在留資格の更新許可申請はしなければなりませんので、そこで在留期間が短くなってしまうようだと完全にOUTです。

法務省発表~日本国への貢献による永住許可、不許可事例(2006.1.1時点)

一般的な永住許可申請に比べて要件を満たすにはハードルは非常に高いのですが、外交、経済・産業、文化・芸術、教育・研究、スポーツ、社会福祉活動、公益活動等の分野において日本国への貢献が認められると、原則として来日後10年を要する申請要件が、5年程度に緩和されます。

「我が国への貢献による永住許可・不許可事例」は以下のように公表されています。

永住許可事例

(事例1)
 科学技術研究者として活動し,科学技術誌に研究論文数十本を発表した実績が我が国の科学技術向上への貢献があったものと認められた(在留歴9年5月)。

(事例2)
 我が国のアマチュアスポーツ選手として活躍し,その間にW杯への出場やスポーツ指導者として我が国のスポーツの振興に貢献があったものと認められた(在留歴7年7月)。

(事例3)
 音楽分野の大学教授として我が国の高等教育活動に従事し,その間,無償でアマチュア演奏家を指導するなど我が国の教育や文化の振興に貢献があったものと認められた(在留歴5年10月)。

(事例4)
 日本文学研究者として勲3等旭日中綬章授賞のほか各賞を受賞し,文学の分野での貢献があったものと認められた(通算在留歴9年,入国後3月)。

(事例5)
 長期間にわたり我が国の大学教授として勤務し,高等教育に貢献が認められた(在留歴7年)。

(事例6)
 大学助教授として我が国の高等教育活動に従事し,その間,科学技術研究者としての成果も顕著であり,多数の科学技術誌への研究論文の掲載の他,各種学会,研究グループの指導等を行い,我が国の産業,教育等の分野に貢献があると認められた(通算在留歴9年5月,入国後7年11月)。

(事例7)
 システム開発等の中心的役割を担う立場として顕著な実績を挙げており,その実績は高く評価されていることから,我が国の情報技術産業に貢献が認められた(通算在留歴10年9月,入国後6年)。

(事例8)
 長期間にわたり在日外交官として勤務し,国際関係分野において貢献が認められた(通算在留歴6年3月)。

(事例9)
 本邦での研究の結果,多数の学術誌に掲載し,国際会議での招待講演を要請される等,その分野において国際的に認められている他,国内の企業・研究所との共同研究に携わっており,我が国の学術・技術分野に貢献が認められた(在留歴7年9月)。

(事例10)
 我が国の大学助手として4年以上勤務しており,高等教育活動に従事しているほか,派遣研究員として第三国で研究活動を行う等,研究面においても一定の評価があることから,我が国の学術分野において貢献が認められた(在留歴7年3月)。

(事例11)
 我が国の大学の常勤講師として3年以上勤務しており,我が国の高等教育(外国語)の水準の向上に貢献が認められた(通算在留歴8年1月)。

(事例12)
 我が国の大学助教授として5年以上勤務しており,高等教育(外国語)の水準の向上に寄与しているほか,大学入試センター試験等各種教育活動に参画していることなどから,我が国の教育分野において貢献が認められた(在留歴7年2月)。

(事例13)
 我が国の大学助教授として3年弱勤務しており,我が国の高等教育(情報技術)の水準の向上に貢献が認められた(通算在留歴17年4月,入国後4年11月)。

(事例14)
 我が国の大学の助教授及び教授として5年以上勤務しており,我が国の高等教育(国際法)の水準の向上に貢献が認められた(在留歴5年6月)。

(事例15)
 我が国の大学助手として3年以上勤務し物理学の研究指導等をおこなっているほか,基礎物理学の研究を行いその成果は学術雑誌に多数掲載されている等,我が国の学術分野において貢献が認められた(在留歴11年2月)。

(事例16)
 我が国の大学教授として3年以上勤務しており,我が国の高等教育(国際政治学)の水準の向上に貢献が認められた(在留歴13年7月)。

(事例17)
 入国以後,我が国の大学で約9年にわたり勤務し,我が国の高等教育(外国の教育学,外国文化)の水準の向上に貢献が認められた(在留歴8年11月)。

(事例18)
 我が国の大学で教授として通算約22年間勤務し,我が国の高等教育(神経心理学)の水準の向上に貢献が認められた(在留歴7年6月)。

(事例19)
 生物学研究者として活動し,その研究の成果が実用面への利用されていること等,十分な結果を出していることから,我が国の研究分野において貢献が認められた(在留歴10年10月)。

(事例20)
 入国以後,我が国の大学で教授として8年以上勤務し,我が国の高等教育(情報技術)の水準の向上に貢献が認められるほか,研究分野では国内外から高く評価されていることから,我が国の教育・研究分野において貢献が認められた(在留歴9年9月)。

(事例21)
 医療関係の研究を行っており,関係機関から表彰を受ける等,国内外から高く評価されていることから,我が国の研究分野において貢献が認められた(在留歴9年8月)。

(事例22)
 在日外国公館に通算約10年勤務し,その間に我が国と派遣国の国際交流に貢献があったものと認められた(在留歴8年)。

(事例23)
 入国以後,我が国で先端技術に係る研究を行い,その成果は国内外の学術雑誌への掲載,学会での発表等しており,我が国の研究分野において貢献が認められた(在留歴8年3月)。

(事例24)
 入国以降,一貫して地方における英語教育に従事する一方で,地方の方言で語りながら伝統的楽器を演奏することで伝統文化を内外に宣伝する活動あるいは大学での講義を通じて外国人の視点に立った我が国の地方文化を内外に広める活動を行っており,文化・芸術分野における貢献が認められた。(在留歴7年)

(事例25)
 我が国の大学の医学部整形外科学講座で3年以上勤務し,整形外科学に係る学術雑誌において多数の論文が特集で掲載され,著名な専門雑誌にも論文が引用されており,研究分野における貢献が認められた。(在留歴13年4月,就労資格変更後3年)

(事例26)
 我が国の大学の農学部助教授として5年以上勤務しており,我が国の高等教育の水準の向上に貢献が認められたほか,国内及び国外の学会においてその研究成果が高く評価され,著名度の高い外国雑誌に掲載されるなど,研究分野においても貢献が認められた。(在留歴5年7月)

(事例27)
 入国以来6年間にわたって,独立行政法人に所属しながら我が国の研究所において研究活動に従事しており,専門分野の雑誌に掲載されている論文も多数あり,我が国の研究分野における貢献が認められた。(在留歴6年)

(事例28)
 我が国の大学の常勤講師として6年以上勤務しており,独自の語学教授法を開発し,教科書の編纂や講師の教育にも従事し,我が国の教育分野における貢献が認められた。(在留歴6年2月)

(事例29)
 本邦内で,日本応用磁気学会,日本セラミックス協会,日本応用物理学会等において学術活動をし,磁性薄膜及び応用分野の学術・技術発展に貢献し,多数の論文と特許出願を行っており,我が国の研究分野への貢献が認められた。(在留歴8年8月)

(事例30)
 本邦内の会社員として勤務しながら,電気学会において多数の論文を発表し,学術雑誌等において表彰され,権威ある賞を受賞していることから,研究分野での貢献が認められた。(在留歴10年4月,就労資格変更後4年3月)

(事例31)
 本邦内の国立大学工学部の教授として約8年間勤務し,我が国の高等教育の水準の向上に貢献したことが認められた。(在留歴8年3月)

(事例32)
 入国以来,本邦内の大学で,専任講師,教授等として,約7年間英語教育に従事し,我が国の高等教育の水準の向上への貢献が認められた。(在留歴6年9月)

(事例33)
 本邦内の自動車生産会社に勤務し,粉末冶金関係の論文を多数発表し,日本金属学会誌等に多数掲載されているほか,権威ある協会から表彰されており,産業の発展及び研究分野における貢献が認められた。(在留歴8年6月)

(事例34)
 本邦内の大学の経済学部博士課程を修了後,大学の教育職員として採用され,約3年間助教授として講義を担当しているほか,国際的ネットワークを構築するためのプロジェクトのメインコーディネーターを任されるなど教育分野での貢献が認められた。(在留歴7年)

(事例35)
 オリンピックに出場した日本人選手のコーチを勤めていたほか,現在も次期オリンピックに出場する見込みのある選手のコーチをしており,その他の活動等を通じて,我が国におけるスポーツ等の振興に多大な貢献のあった者として認められた。(在留歴6年7月)

(事例36)
 約20年前から日本国内でスポーツ競技大会に出場し,日本において競技生活を続けている者で,権威ある協会から,日本における同競技の発展に大いに貢献している旨表彰されており,我が国におけるスポーツ等の振興に多大な貢献のあった者として認められた。(在留歴7年6月)

(事例37)
 留学生として約14年間在留し,以降大学の専任講師として約4年間,異文化間コミュニケーション等の授業を担当しており,我が国の高等教育の水準の向上に貢献したことが認められた。(在留歴18年1月,就労資格変更後4年8月)

(事例38)
 本邦内において,ナノテクノロジー,フルカラー半導体ナノ粒子の合成等に関係する多数の論文を発表しており,日本化学会,高分子学会等において,独自の研究成果を発表していることから,研究の分野への貢献が認められた。(在留歴8年8月,就労資格変更後3年7月)


永住不許可事例

(事例1)
 日本産競走馬の生産・育成,輸出,馬産農家経営コンサルタント,講演等を行っているとして申請があったが,入国後1年半と短期であることから不許可となった。

(事例2)
 画家として多数の作品を製作・保有し,美術館の建設後に寄贈するとして申請があったが,在留状況が良好とは認められず(不正な在留に関与),不許可となった。

(事例3)
 外国人の子弟の教育を行う機関において教師の活動を行っているとして申請があったが,当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないものとして不許可となった。

(事例4)
 約1年間,高校で教師をしている他,通訳等のボランティア活動を行っているとして申請があったが,当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないとして不許可となった。

(事例5)
 本邦で起業し,当該法人の経営を行っているが,その投資額,利益額等の業績からは顕著なものであるとはいえず,我が国経済又は産業に貢献があるとは認められず,不許可となった。

(事例6)
 大学で研究生として研究活動を行っているが,教授等の指導を受けて研究している通常の研究生,学生等の範囲内での研究活動であり,研究分野において貢献があるとまでは認められず,不許可となった。

(事例7)
 投資関連企業の課長相当職にある人物であるが,当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず,他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。

(事例8)
 システム開発関連企業の課長補佐相当職にある人物であるが,当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず,他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。

(事例9)
 約9年間,本邦に在留し,作曲活動や自作の音楽作品発表会を行い,我が国と本国との音楽分野における交流に努めているとして申請があったが,文化・芸術分野における我が国への貢献とは認められず,不許可となった。

(事例10)
 約9年間,本邦に在留し,我が国の芸能人による本国での公演の実現,我が国と本国の企業交流にかかるイベント実現等を理由に申請があったが,我が国への貢献とは認められず,不許可となった。

(事例11)
 入国後,3年間は留学生として在留し,その後,我が国の大学の医学部助手として5年間勤務していたが,我が国の高等教育の水準の向上に貢献があったものとは認められず不許可となった。

(事例12)
 語学指導助手として入国し,3年間は本邦内の中学校で,それ以降は高等学校において約4年間英語教育に従事していたが,日本の大学又はこれに準ずる機関の常勤又はこれと同等の勤務の実体を有する教授,助教授又は講師としては認められず,高等教育の水準の向上に貢献のあった者とは認められなかった。(在留歴6年11月)