「日本人の配偶者等」の概要
「日本人の配偶者等」に該当するのは、①日本人の配偶者、②民法第817条の2に規定されている特別養子、③日本人の子として出生した者をいいます。
- ①日本人の配偶者
- 「配偶者」とは現に婚姻中の者のことをいい、相手方が死亡した場合や離婚した場合はこの在留資格には該当しないことになります。また、婚姻は、法律上の婚姻であることが要件となっており、内縁関係にある者も含まれません。
- 日本人との婚姻関係が形式的に存在するだけでは十分ではなく、同居し、互いに協力し、扶助し合って社会通念上の夫婦共同生活を営むという夫婦の関係が実質的にも存在しなければなりません。
- ②民法第817条の2に規定されている特別養子
- 「民法第817条の2に規定されている特別養子」とは、家庭裁判所の審判によって認められる生みの親との親子関係を切り離した養子縁組のことで、普通養子と区別されています。なお、厳格な要件が不要とされる一般の普通養子には、日本人との養子縁組を悪用する者が出ることの危惧からこの在留資格は認められておりません。
- ③日本人の子として出生した者
- 「日本人の子として出生した者」には実子である嫡出子の他、認知された非嫡出子も含まれます。
- 子が出生した時、父または母のいずれか一方が日本国籍を有していること、または、子の出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡時に日本国籍を有していた場合であること(子の出生後に父または母が日本国籍から離脱した場合も含まれます)。
上陸許可基準について
この在留資格は、入管法第7条第1項第2号の上陸審査基準の適用を受けません。
ですので、「芸術」の在留資格なら、自分が芸術家であることを証明すればよく、それ以外の基準はないということです。
「日本人の配偶者等」の場合も、本当に結婚していること、偽装結婚ではないことを証明さえすれば、在留資格が認められることになります。
また、日本人の配偶者等の在留資格を有する者のうち、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留することが(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)、在留資格取消制度の対象とされてしまいますので注意が必要です。(平成21年7月15日から3年以内の政令で定める日から施行)(入管法22の4Ⅰ⑦)
審査が厳しくなってしまうケースについて
夫婦間の年齢差がある場合
夫婦間の年齢差が大きい場合には、婚姻の信ぴょう性については極めて厳格に審査されます。特に、年齢差が20歳以上あるようなケースでは、慎重に交際の経緯、生活状況等の詳細な記載を要し、かつそれらの裏付けとなる資料の提出が許可のポイントとなります。
交際のきっかけが結婚相談所や交際相手の斡旋所である場合
結婚相談所や交際相手斡旋所の紹介による場合も婚姻の信ぴょう性については極めて厳格に審査されます。年齢差がある場合と同様に、交際の経緯、生活状況等を詳細に記載を要し、かつそれらの裏付けとなる資料の提出が許可のポイントとなる他、結婚式や披露宴を行った事実証明等が重要となってきます。
日本人側に外国人との離婚歴・外国人側に日本人との離婚歴がある場合
偽装結婚を繰り返しているのではないかと疑われるケースですので、婚姻の信ぴょう性と婚姻の安定性を中心に立証していくことになります。特に前婚の婚姻期間が短い場合には、綿密な立証が必要となります。
「日本人の配偶者等」Q&A
中国人女性との結婚を考えています。結婚後は日本で暮らす予定ですが、どのような手続を行えばよいのでしょうか?
日本人の配偶者の在留資格を取得する手続としては、以下の二通りの方法があります。
- ①日本国内で手続を行う場合【在留資格変更許可申請】
これは、すでに日本国内に在留している外国人との間で行われる場合が多いのですが、外国に居住している方でも、日本人との婚約後に、婚約者訪問の目的で短期滞在査証の発給を受けて来日し、日本国内で結婚手続を済ませ、結婚を理由として在留資格変更の許可を受けてそのまま日本に在留することが可能です。
入籍の事実のある戸籍謄本、その他の提出書類に不備がなければ申請は受理してもらえます。申請が受理されるとパスポートには「申請中」のスタンプが押されますので、その審査の期間中は日本での滞在が可能です。
審査期間につきましては個人差があるのですが、1~3ヶ月程度です。
- ②海外で結婚をした後に日本に招聘する場合【在留資格認定証明書交付申請】
日本人が、現地に渡航して正式に結婚し、日本人のみが先に一人で帰国して、住所地の市役所等に婚姻届を提出します。その後、地方入国管理局に「日本人配偶者等」の在留資格認定証明書交付申請をします。在留資格認定証明書が交付されたら本国にいる外国人の配偶者に送付をし、外国人配偶者は現地の日本大使館に行って査証を取得した後に来日します。
どちらのケースが良いといったことはありませんが、短期査証で入国しやすい国の人であれば①を、短期査証での入国が難しい国の人であれば②のケースで婚姻手続きを進めるケースが大半です。
「短期滞在」で日本に招聘してから結婚をし、その後、在留資格を「日本人の配偶者等」に変更する方法での外国人との婚姻手続きを進めていきたいのですが、短期滞在の90日間に在留資格変更が認められるかどうか心配です。もし在留期限までに結果が出ないと不法滞在となってしまうのでしょうか?
通常は、90日の「短期滞在」が取得できれば、婚姻手続きをしてから入管に「日本人の配偶者等」の申請をされても十分に間に合うかと思います。
ただし、外国人の本国でしか取得できないような「出生証明書」や「独身証明書」等を現地から取り寄せしていると思わぬ時間が取られてしまう事態にもなりかねませんので、申請に必要な書類は来日時に全て持参されるようにしてください。
なお、入管への申請後は、在留資格変更許可申請が受理されたのであれば、仮に短期滞在の在留期限が切れていたとしても、申請に対する結果が出るまでは日本に滞在することが出来ますのでご安心ください。
現在中国(香港)国籍の夫と香港に在住しているのですが、父が先立ち年老いた母の面倒を見る人が日本には誰も居なくなったため、生活基盤を日本に移そうと思い、夫の日本での就職先が決まりました。多忙な主人の代わりに私が全て在留資格認定証明書の交付申請をしようと思いますが、海外から一時帰国しないで行政書士にお願いできますか?
日本への一時帰国を考えておられないのでしたら、行政書士等のビザの専門家を活用されるのが良いでしょう。
また、ご自身で申請されるのでしたら、日本に先に、一人で一時帰国され、国内で「在留資格認定証明書」の申請を行い、後からご主人を招聘された方法もありますし、ご主人は「短期滞在」で日本に入国し、その後、入国管理局に対して「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可申請を行う方法もあります。
インドネシア人の男性と結婚を考えている日本人の女性ですが、現在彼はバリ島で働いています。まだ彼とは旅行先で出会って3カ月しかたっていませんが、私は妊娠してしまいました。現在体調が芳しくなく、妊娠が発覚してからは職場を退職してしまいました。同居をしている両親に話をしたところ、激怒されて、現在は口も聞いてもらえないような状況ですが、私は結婚を真剣に考えています。彼を「日本人の配偶者等」で招聘することは可能でしょうか?
せめてご両親のご承諾があれば状況的には可能性が出てくるのですが、現在のような状況では申請しても許可が下りない可能性が高いです。
まず、インドネシア人の方が、日本での就職先が既に決まっているようでしたら理想ですが、海外在住の外国人による個人レベルでの求職活動となると現実的にはなかなか就業先を見つけるのが厳しいかと思われます。
また、あなたは現在は無職とのことで、一般的な源泉徴収票や所得証明も出せない状況下にありますので、そこで、このようなケースでは現在お持ちの預貯金の残高証明書を提出するか、ご両親の援助を受けられるようであればその旨を申請時に証明しなければなりません。
経済的または家庭的な状況が改善するのを待たれるか、あるいは可能性としては全くないわけではありませんので、ダメもとで申請されてみられるのも手だと思います。
タイ出身の24歳の女性です。2年前に日本人男性と結婚し、日本にやってきましたが、離婚することになりました。「日本人の配偶者等」の在留資格で、在留期限がまだあと1年間残っているのですが、在留期限内は日本に居て、アルバイトをしたりできるのでしょうか?
在留期限がまだあと1年間残っているとのことですが、それはあくまで入管法上の「日本人の配偶者等」として在留する場合に限られます。
離婚をされたのであれば法律婚が解消された状態であるため、「日本人の配偶者等」の在留資格からは外れてしまうことになります。
したがって、何ら手続をしないまま日本で働くことは望ましくはありませんが、在留期間が残っている限りは「不法就労」とはならず、また、在留資格が取り消されることもありません。
しかし、速やかに他の在留資格に変更をされるか、帰国をされるかの行動を起こされたほうがほうが望ましいと言えます。
ベトナムの送り出し機関を通して、3年間の契約で来日して働いている技能実習生です。職場の日本人男性が私に好意を寄せてくれ、プロポーズされたのですが、受け入れ機関の担当者の方からは、「3年の契約期間が終了してからにするか又は技能実習生を辞めて、一時帰国してから結婚すべき」と言われ悩んでいます。私も彼のことが好きになり、可能であれば今すぐに結婚をと考えているのですが、在留資格の変更による結婚の手続は技能実習生の場合はできないのでしょうか。
技能実習生と日本人男女の結婚も年々増えてきているようです。現状では、技能実習の契約期間終了後に一旦帰国してからの結婚のケースが多いようですが、必ずしもこのようなステップを踏まねばならないわけではなく、入管法上は在留資格の変更で、配偶者ビザを取得することも可能です。
しかし、技能実習生の場合は、日本で学んだ技術を帰国後に本国で役立てるといった技能実習ビザ本来の趣旨と、送り出し期間と受け入れ機関との契約の問題もありますので、あなたの一存だけで決められてしまいますと周囲に迷惑がかかってしまうことは避けられません。
ただ、国の制度や機関の思惑により、愛し合う二人の関係が制限を受けてしまうのも好ましいことではありませんので、このようなケースの場合は周囲の方に良く相談して頂き、受け入れ機関、送り出し機関の賛同を得ることが、一時帰国しないで日本に居ながらにして配偶者ビザの手続を進めていく上でのポイントとなります。
フィリピン人女性と結婚をした日本人男性です。挙式もあげ、日比両国の機関に結婚届けも出し、入国管理局に「在留資格認定証明書交付申請」をしましたが、不交付となってしまいました。どうすればよいのでしょうか。
先ずは、不交付通知書の記書き以下の欄の不交付の理由をご確認ください。
不交付の理由が、事実の信ぴょう性に欠ける、立証不足、申請人の以前の日本滞在時の在留状況が悪かったから等であれば再度の申請の余地はあります。
ただし、事前に、①一体何が根本的な原因となっているのか、②根本的な原因以外に他に問題点はないのか、③これらの問題点がクリアできれば再申請してもビザを貰える可能性があるのかということを、入管に出頭して確認を取るべきです。
ただし、入管で事情説明を受けても事細かに具体的な方法論を教えてもらえるわけではありませんし、立証責任はあくまで申請者側にあります。
1回不許可が出てしまいますと、それを覆すだけの立証作業は一般的には難しいものが多いですから、行政書士等の専門家に相談されてみられたらよいでしょう。
日本人男性と結婚していたのですが離婚をし、再度別の日本人男性と再婚をしました。この場合の手続はどのようになるのでしょうか?
日本人と結婚している外国人の方が、日本人の配偶者等の在留資格で日本に在留していて離婚した場合、本来であれば、別の在留資格に変更をするか、一旦本国へ帰国しなければなりません。
しかし、質問のようなケースでは、結婚相手は替わったものの、在留目的は「日本人の配偶者」としての活動となりますので、そのまま在留期間更新許可申請をすることとなります。
ただ、申請自体は在留期間更新許可申請となりますが、添付書類は、在留資格変更許可申請と同じものが必要となり、理由書の提出も求められますので通常の更新手続と比べると手続きが煩雑です。
また、このようなケースでは偽装結婚を疑われやすいケースに該当しますので、真実の結婚であるならばその旨の証明を適切に行う必要があります。
申請の重要なポイント
日本人配偶者の申請については偽装結婚が急増した過去の経緯から、入管の審査が非常に厳しくなっています。特にフィリピン、ロシア、中国本土の特定の省出身者については原則不許可、例外許可のような運用がなされていますので、偽装結婚でないことの証明を入管の担当官に理解してもらえるよう努める必要があります。
上陸・在留手続の必要書類
在留資格認定証明書交付申請手続の必要書類(配偶者のケース)
- 【外国人本人】
- パスポートの写し×1
- 顔写真(4cm×3cm)×1
- 婚姻の事実を証明するもの(原本及び公証書)×1
- 【申請代理人等】
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 日本人配偶者の戸籍謄本×1
- 申請人の国籍国機関発行の結婚証明書×1
- 日本人配偶者の住民税の納税証明書及び所得課税証明書×各1
- 日本人配偶者の住民票の写し(世帯全員の記載のあるもの)×1
- 身元保証書×1
- 質問書×1
- スナップ写真数葉
- 質問書×1
- 返信用封筒(392円の切手を貼る)×1
- 【その他提出するのが望ましい書面】
- 在職証明書
- 交際の経緯・生活状況等の概要書
- 交際の履歴を立証する資料
在留期間更新許可申請手続の必要書類
- 在留期間更新許可申請書×1
- 証明写真(4cm×3cm)×1
- 日本人配偶者の戸籍謄本×1
- 日本人配偶者の在職証明書×1
- 日本人配偶者の住民票の写し×1
- 日本人配偶者の住民税の納税証明書及び所得課税証明書×各1