退去強制と出国命令 入管法§24、§24の3

「退去強制」とは、国家が好ましくはないと認める外国人を所定の行政手続により国外に強制的に退去させることができる旨の規定です。

外国人の入国・在留の許可については国家が自由に決定でき、在留中の外国人について一定の事由に該当した場合、強制的に国外に退去させることができます。

国際法上、国家は、外国人の入国・在留に関して許可するか否か、いかなる条件で許可するのかについて自由な裁量の権限を持っています。

この「強制退去」は刑事罰とは異なり、入管法上の退去強制事由の判断に関しては、当該外国人の違反事実についての故意又は過失の有無は要件とはされておりません。

また、平成16年より、退去強制手続きの特例として、「出国命令制度」が設けられました。

「出国命令制度」とは入管法違反者のうち、一定の要件を満たす不法残留者について身柄を収容しないまま簡易な手続により出国させる制度のことです。

通常の退去強制手続きがとられるのか、特例としての出国命令制度がとられるのかは、入国警備官による容疑者への違反調査によって振り分けられます。

退去強制事由

入管法の第24条で、強制的に退去させるべき者を、事由別に限定的に列挙されています。主な該当事由としては以下のとおりです。

1.不法入国者 2.不法上陸者 3.在留資格を取り消された者 4.不法残留者(オーバーステイ)5.偽変造文書を作成・提供等した者 6.テロリスト 7.国際的な取り決めにより入国を防止すべき者 8.在留カード、特別永住者証明書の偽造・変造等【NEW】 9.資格外活動違反者 10.人身売買取引等の加担者 11.刑罰法令違反者 12.売春等従事者 13.不法入国・不法上陸の幇助者 14.国際競技等に関連して暴行等を行った者 15.仮上陸許可条件違反者 16.退去命令違反者 17.出国命令制度による出国命令を取り消された者 18.難民認定を取り消された者 19.暴力主義的破壊活動者 20.利益公安条項該当者 etc.


資格外活動違反者の取り扱いについて

資格外活動違反者については4号‐イで定められている「専従資格外活動者」と4号‐ヘで定められている「非専従資格外活動者」とに大別されます。

「専従資格外活動者」とは、資格外活動許可を受けずに資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者で、在留目的が実質的に変更したと評価し得る程度まで資格外活動を行っている者が該当します(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除かれます)。

「非専従資格外活動者」とは、資格外活動許可を受けずに資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者を除く趣旨で、付与された在留資格に属する活動を行いつつも資格外活動許可を受けずに資格外活動を行う者で、禁錮以上の刑に処せられた者が退去強制事由に該当します。

いずれの資格外活動違反も退去強制事由であるのことは共通していますが、罰則規定において「専従資格外活動者」のほうが3年以下の懲役か禁錮、又は300万円以下の罰金に処されるか、これらを併科とされているのに対し、「非専従資格外活動者」のほうは1年以下の懲役、禁錮又は200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科とされており、違いがあります。

退去強制手続の流れ

退去強制手続きは、下図のように【入国審査官の違反調査】→【特別審理官の口頭審理】→【法務大臣又は地方入国管理局長の裁決】の三審制となっています。

FLOW

仮放免について 入管法§54

退去強制中の外国人の身柄については、入管法上の「全件収容主義」が適用され、原則として入国管理センターに身柄が収容されることになっています。

ただし、収容されている外国人本人やその親族や行政書士等の代理人等は、一時的に収容を解くことができる「仮放免」を請求することができます。

この仮放免は、一定の要件に該当する場合において300万円以下の保証金を納付することにより身柄の拘束が解かれることになります(※被収容者の全てに認められている権利ではありません)。

在留が例外的に認められるケースもあります!

退去強制事由に該当した外国人の全てが国外へ退去させられるわけではなく、日本での生活歴や家族状況等が考慮され法務大臣から在留を特別に許可される場合があります。

☞在留特別許可の手続きについて?

強制退去による上陸禁止期間と上陸特別許可

退去強制処分を受けると上陸拒否事由に該当し、原則として5年間は日本に上陸することはできなくなります。

また、過去に退去強制又は出国命令を受けて出国したことがある者(リピーター)は、10年間は日本に上陸することはできません。

上陸拒否期間中で、本来は上陸が許可されないような人に対しての超法規的な救済手段として「上陸特別許可」を得る方法がありますが、特別に上陸を許可すべき事情があるか否かについて、極めて厳格な審査がなされ、許可のハードルが非常に高く、大変難易度の高い申請となっています。

☞ 【上陸特別許可申請のための必要最低限の条件】

① 日本人、特別永住者永住者定住者と法的な婚姻が成立しており、婚姻の信ぴょう性の立証が十分になされていること

② 申請時において、退去強制後2年以上経過していること。ただし、配偶者との間に実子が存在する場合や頻繁に退去強制処分となった配偶者の元を訪れている事実がある場合には例外的に退去強制後1年以上~2年未満の経過で許可される場合もあります。

③ 申請時において婚姻後1年以上経過していること

④ 執行猶予付き有罪判決を受けた後に退去強制された場合は、申請時において執行猶予の期間がほぼ終了していること。ただし配偶者との間に実子が存在する場合や頻繁に退去強制処分となった配偶者の元を訪れている事実がある場合には例外的に執行猶予期間がまだ残存していても許可される場合もあります。

出国命令制度 入管法§24条の3

出国命令制度とは、日本に滞在する不法残留者を自主的に出頭させて、身柄を収容せずに簡易な手続により出国させる制度でのことで、不法残留者の減少を図る目的で平成16年に創設された制度です。

退去強制と違い、身柄を拘束することなく出国期限を指定することにより出国させる制度で、指定された出国期限内の在留は合法化されている点で退去強制の例外的な措置とされており、上陸禁止期間は1年間と軽減されています。

比較flow

出国命令制度の対象者となるための要件

出国命令制度は、該当する不法残留者を対象として、出国命令制度の要件をいずれも満たす対象者にのみ適用されます。

出国命令制度を利用するには、以下の5つの要件のいずれも満たしていなければなりません。自主的に出頭したとしても以下の要件を満たしていなければ、退去強制手続に移行します。

① 速やかに出国する意思を持って、自ら入国管理局に出頭すること

② 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと

③ 入国後に一定の刑法上の犯罪により懲役又は禁錮に処せられていないこと

④ これまでに退去強制されたり出国命令を受けて退去・出国したことがないこと

⑤ 速やかに出国することが確実と見込まれること

豆知識 出国命令により出国した場合は、例え退去強制と比べて上陸禁止期間が1年間と短くなっているといっても、1年間の経過により必ず再入国が保証されているわけではありません。

日本人の配偶者等永住者の配偶者等の在留資格に該当するケースで、在留特別許可が得られる可能性のある場合においては出国命令制度の利用ではなく、敢えて通常の退去強制手続きを選択して在留特別許可を申請する方法もあります。

☞在留特別許可の手続きについて?

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